日本は1970年(昭和45年)に高齢化社会になり、それから20数年後、1994年(平成6年)に高齢社会になった。そして2007年(平成19年)には、ついに超高齢社会となったことは、周知の通りである。
そして2010年(平成22年)の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は22.7%(前年22.1%)となり、5人に1人が高齢者という社会がここに現実のものとなった。
高齢化率の上昇スピードは速い。こうした超高齢社会の進展において、旧住宅公団(現在のUR都市再生機構)を主として、大量に供給された建設された団地型の公的住宅の老朽化と居住者の超高齢化が社会問題として現れ、その対応が模索されてきたが、すでに都心部の団地型の公的団地で限界集落が出現しており、孤独死が深刻な社会問題となっている。
こうした背景から、「団地再生」という言葉が注目されてきた。住宅施設の面からは、老朽化し陳腐化した施設の再生(リフォーム)が研究、論議され、モデル事業による実験的な試みが進展しつつある。
一方、団地の生活者の面から、また福祉介護、医療の社会制度の面からは、少子高齢社会に対応する団地生活を支援する公的サービスが行政、地域の市民、福祉関連団体、大学研究者等の地道な活動により進められ、介護保険法の改正(平成18年4月1日)による、地域住民の保険医療介護の地域拠点となる地域包括センターの開設も進みつつある。
しかしながら、高齢化のスピードは速く、『孤独死』『無縁社会』『買物難民』といった言葉がニュースに流れ、報道番組に取り上げられる頻度が多くなっている。団地在住高齢者の孤独死防止、高齢者等の生活弱者の日常生活の支援等への対応が、深刻な緊急課題としてクローズアップされているに至っている。
今回の実践的研究は、すでにこうした超高齢化が顕在化し、さらに年々高齢化圧力が増大していく地域において、中層5階建棟(エレベータなし)を多く含む老朽化した団地の厳しい住環境の中で生活する、高齢者、要介護者、子育て世帯等の生活弱者の日常の生活支援のあり方について、次の3点に焦点を当てて問題の解決に取り組むものとする。
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